グラトリ乗り系・弾き系の違いとは?初心者向けに特徴と技を解説

ゲレンデを滑りながら繰り出す、スノーボードのクールなトリック「グラトリ」。ジャンプ台がなくても、平らな場所で気軽に挑戦できるのが魅力で、初心者からでも始めやすいテクニックです。一口にグラトリと言っても、実は様々なスタイルがあります。
特に代表的なのが、板の反発力を活かしてジャンプや回転をするタイプと、板をしならせて雪面を滑るように操るタイプです。
「自分はどちらのスタイルが向いているんだろう?」「どんな技があって、どう練習すればいいの?」「どんな板を選べばいいのかな?」そんな疑問をお持ちではないでしょうか。
この記事では、それぞれのスタイルの特徴や代表的な技、初心者向けの練習ステップ、そして上達を助けるギア選びのコツまで、詳しく解説していきます。グラトリの世界を知り、あなたのスノーボードライフをもっと豊かにするヒントを見つけてください。
- グラトリ「乗り系」「弾き系」の特徴と違い
- 代表的なグラトリ技(オーリー、プレス等)
- 初心者向けのグラトリ練習ステップ
- スタイルに合わせたボード選びのコツ
グラトリ「乗り系」「弾き系」とは?特徴を解説

ゲレンデの緩やかな斜面で、ジャンプ台などを使わずに繰り出すトリック、それが「グラトリ」です。手軽に始められる反面、奥深い魅力があります。
そんなグラトリには、大きく分けて「乗り系(バター系)」と「弾き系(スピン系)」という2つのスタイルが存在します。それぞれ、どのような特徴があり、どんな動きをするのでしょうか?
ここでは、それぞれのスタイルの基本的な動きや魅力、そして違いについて詳しく解説していきます。自分の目指すスタイルを見つけるヒントにしてください。
グラトリの基本:ゲレンデで楽しむトリック
「グラトリ」とは、「グラウンド・トリック」を短くした言葉です。スキー場などのゲレンデで、ジャンプ台のような特別な設備を使わずに、平らな場所や緩やかな斜面で行う様々な技のことを指します。
特別な場所に行かなくても、ゲレンデの空いているスペースを見つければ気軽に挑戦できるのが大きな魅力です。スピードをあまり出さなくてもできる技が多いので、スノーボードを始めたばかりの方や、体力に自信がない方でも比較的安全に楽しむことができます。
ただし、簡単そうに見えても、実はボードをうまく操る技術が必要です。技によっては、進行方向が見えにくい体勢になったり、バランスを崩しやすかったりすることもあります。
そのため、楽しむためには基本的な滑走技術を身につけ、無理のない範囲から練習を始めることが大切です。
グラトリは、ただゲレンデを滑るだけでなく、ちょっとした遊び心やおしゃれな動きを加えることで、スノーボードの楽しみ方をさらに広げてくれるテクニックです。
板の反発力!弾き系(スピン系)の特徴
グラトリの中でも「弾き系(はじきけい)」と呼ばれるスタイルは、スノーボードの板が持っている「元に戻ろうとする力」をうまく利用するのが特徴です。スノーボードの板は、力を加えると弓のようにしなり、力を抜くと勢いよく元の形に戻ろうとします。
この力を「反発力(はんぱつりょく)」と呼びます。「弾き系」の技は、この反発力をジャンプのエネルギーに変えたり、回転するきっかけにしたりします。
具体的には、滑りながら板の先端(ノーズ)や後端(テール)を雪面に押し付け、板がしなった瞬間に力を抜くことで、ポンッと飛び上がります。この動作を「弾く」と言います。
高くジャンプしたり、空中でクルクルと回転したりする派手な技が多く、見た目にもかっこいいのが弾き系の魅力です。このスタイルを極めるには、板の性能、特に反発力の強さが重要になります。
一般的に、少し硬めで反発力が高い板の方が、弾き系の技はやりやすいと言われています。力強く弾くことで、より高く、より速く回転することができます。
弾き系のコツはタイミングと基礎練習
弾き系のグラトリを成功させる上で、最も重要と言っても過言ではないのが「タイミング」です。板をしならせて、その反発力を最大限に引き出すためには、力を入れる瞬間と抜く瞬間のタイミングがぴったり合っている必要があります。
タイミングがずれてしまうと、思ったように高く飛べなかったり、回転が足りなかったりしてしまいます。この絶妙なタイミングを掴むには、何度も繰り返し練習することが欠かせません。
また、派手な回転技に挑戦する前に、まずは基本となる技をしっかりと身につけることが大切です。特に「オーリー」と「ノーリー」は弾き系の基本中の基本です。
「オーリー」は後ろ足で板のテールを弾いてジャンプする技、「ノーリー」は前足で板のノーズを弾いてジャンプする技です。
これらの基本的なジャンプで、板の反発力を利用する感覚を養うことが、より高度な技への第一歩となります。焦らず、オーリーやノーリーといった基礎からじっくりと練習し、体に正しい動きとタイミングを覚え込ませることが、上達への近道です。
板をしならせる!乗り系(バター系)の特徴
グラトリのもう一つの大きなスタイルが「乗り系(のりけい)」です。これは、板の反発力を使って高く跳ぶ「弾き系」とは対照的に、板をしならせた状態で滑るテクニックを指します。
「乗り系」では、体重を板の先端(ノーズ)か後端(テール)のどちらかにグッとかけて、板の片側を雪面から浮かせるようにします。この板をしならせて押さえつける動きを「プレス」と呼びます。
まるでバターナイフでパンにバターを滑らかに塗るような動きに見えることから、「バター系」とも呼ばれています。プレスした状態をキープしたまま滑ったり、そのまま回転したり、プレスする位置を滑らかに入れ替えたりするのが特徴です。
このスタイルでは、高くジャンプするような派手さはありませんが、流れるようなスムーズな動きや、ボードコントロールの上手さが求められます。
バランス感覚と、体重移動によってボードを自在に操る繊細な技術が必要になります。一般的には、板が柔らかい方がプレスしやすく、乗り系の技がやりやすいと言われています。
乗り系の魅力はスタイリッシュな動き
乗り系(バター系)グラトリの最大の魅力は、その「スタイリッシュさ」にあります。弾き系のような高さや回転数で魅せる派手さとは異なり、乗り系は流れるようなスムーズさと、まるで雪面と戯れるようなおしゃれな動きが特徴です。
バターナイフでバターを塗るように、雪面を滑らかになぞる動きは、見ている人にも軽やかで洗練された印象を与えます。
滑走中に何気なくプレスやスピンを取り入れることで、単調になりがちなフリーランにアクセントを加えることができます。
「お、今の動きかっこいいな」と思わせるような、さりげないテクニックが乗り系の持ち味です。同じプレス系の技でも、重心の位置や板のしならせ方、体の使い方によって個性が出るため、自分らしいスタイルを表現しやすいのも魅力の一つでしょう。
派手さはありませんが、その分、ボードコントロールの巧みさやバランス感覚の良さが際立ち、見る人を惹きつけます。技が綺麗に決まった時の、雪面を滑らかにコントロールしている感覚は、乗り系ならではの達成感を与えてくれます。
グラトリ乗り系・弾き系の技とおすすめボード

グラトリの「乗り系」「弾き系」について理解が深まったところで、次は具体的な技や練習方法、そして大切なギア選びについて見ていきましょう。
オーリーやプレスといった代表的な技から、初心者がまず取り組むべき練習ステップ、さらには各スタイルに適したおすすめボードの傾向まで、実践的な情報をまとめました。
自分に合ったスタイルを見つけ、それに最適なボードを選ぶことで、グラトリの楽しさはさらに広がります。上達への近道となる情報をお届けします。
弾き系の代表的な技:オーリー、ノーリー
弾き系のグラトリを始めるとき、まず覚えたいのが「オーリー」と「ノーリー」です。これらは弾き系の基本中の基本となるジャンプの技で、様々な応用技の土台となります。
「オーリー」は、進行方向に対して後ろ側の足(レギュラースタンスなら右足、グーフィースタンスなら左足)を使って、板の後ろ端(テール)を雪面に叩きつけるようにして弾き、その反動でジャンプするテクニックです。スケートボードのオーリーと似た動きと考えるとイメージしやすいかもしれません。
一方、「ノーリー」はオーリーとは逆に、進行方向に対して前側の足を使って、板の先端(ノーズ)を弾いてジャンプする技です。オーリーよりも少し難しいと感じる人が多いかもしれませんが、これも弾き系の重要な基本技です。
オーリーとノーリーをマスターすることで、板の反発力を利用する感覚が身につき、ジャンプの高さや安定性が向上します。
最初は平らな場所で、その場で軽く飛ぶ練習から始めると良いでしょう。これらの基本ジャンプができるようになれば、回転を加えたり、他の技と組み合わせたりと、弾き系のトリックの幅が大きく広がっていきます。
乗り系の代表的な技:プレス、ドライブ
乗り系(バター系)グラトリの基本となるのが「プレス」です。これは、体重を板のノーズ(先端)かテール(後端)のどちらかにしっかりとかけ、板をしならせて片側を雪面から浮かせる技です。
ノーズ側を浮かせるのを「テールプレス」、テール側を浮かせるのを「ノーズプレス」と呼びます。板をしならせた状態をキープしながら滑ることで、独特の浮遊感や滑らかな動きを生み出します。最初は止まった状態でプレスの形を作り、バランスを取る練習から始めると感覚を掴みやすいでしょう。
そして、プレスを応用した代表的な技が「ドライブ」または「ドライブスピン」です。これは、プレスで板をしならせた状態を維持したまま、エッジ(板の側面)を雪面に引っ掛けるようにして、ジャンプせずに雪面の上でくるりと回転する技です。
ノーズプレスから回転したり、テールプレスから回転したり、様々なバリエーションがあります。プレスで安定して板をコントロールする技術と、スムーズな体重移動がポイントになります。
プレスやドライブは、乗り系のスタイリッシュな動きを作り出す基礎となり、これらを組み合わせることで、流れるような連続技へと発展させることができます。
初心者がまず取り組むべき練習ステップ
グラトリに挑戦したいと思ったら、焦らず段階を踏んで練習することが大切です。何よりもまず、スノーボードの基本的な操作に慣れることから始めましょう。
しっかりと止まる、安定してターンする、といった基本的な滑走技術が身についていないと、トリックの練習は危険ですし、上達も難しくなります。基礎が固まったら、いよいよグラトリの練習です。
最初のステップとして、まずは平らな場所でボードの感覚を掴む練習をします。ボードの上でバランスを取ったり、軽くジャンプしてみたり、その場でボードを少し回してみたりするだけでも、ボードコントロールの練習になります。
次に、緩やかな斜面を選び、ゆっくりとしたスピードで練習を始めましょう。ターンをしながら軽くプレスを試してみたり、小さなオーリーやノーリーに挑戦してみたりします。
最初は弾き系か乗り系、どちらか興味のある方の基本技から集中的に練習するのがおすすめです。転んでも安全なように、ヘルメットやプロテクターを着用し、周りに人がいないか確認してから練習するように心がけましょう。
スタイルで変わるギア選びのコツ
グラトリを楽しむ上で、自分に合ったギア(道具)を選ぶことは非常に重要です。特にスノーボードの板やバインディング(足を板に固定する器具)は、やりたいスタイルによって適したものが異なります。
まず、板の長さですが、一般的にグラトリでは、普段使っているフリーラン用の板よりも少し短めのものを選ぶと、板の取り回しがしやすく、回転系の技もやりやすくなります。
また、板の形状は、ノーズ(先端)とテール(後端)が同じ形をしている「ツインチップ」と呼ばれるタイプが主流です。これにより、スイッチスタンス(通常とは逆の足が前になるスタンス)でも同じ感覚で滑ったり技を行ったりしやすくなります。
板の硬さ(フレックス)も重要なポイントです。板をしならせる動きが多い「乗り系」をメインにやりたい場合は、柔らかめのソフトフレックスの板が扱いやすいでしょう。
一方、板の反発力を利用してジャンプやスピンをする「弾き系」をメインにするなら、ある程度の反発力が得られる少し硬めのミドルフレックス以上の板が適していると言われます。
バインディングも板の硬さに合わせて、足首の自由度が高いものや、反応が良いものなど、スタイルに合わせて選ぶと良いでしょう。初心者の方は、まず扱いやすい柔らかめの板とバインディングから試してみるのがおすすめです。

乗り系・弾き系のおすすめボードの傾向
グラトリのスタイルが決まってきたら、それに合ったボードを選ぶことで、より技がやりやすくなり、上達も早まります。「乗り系(バター系)」の技をメインに楽しみたい方には、一般的に「ソフトフレックス」と呼ばれる柔らかい板がおすすめです。
柔らかい板は少ない力でもしならせやすいため、プレス系の技が格段にやりやすくなります。形状は、スイッチスタンスでも滑りやすい「ツインチップ」が基本です。
また、板のソール(滑走面)の形状が、船底のように少し反っている「ロッカー形状」や、キャンバーとロッカーを組み合わせた「ハイブリッド形状」なども、エッジが引っかかりにくくプレスの動作を助けてくれるため人気があります。長さは取り回しを重視して、通常よりやや短めを選ぶ傾向にあります。
一方、「弾き系(スピン系)」の技を重視する方には、板の反発力をしっかりと活かせる、ある程度の硬さを持った「ミドルフレックス」から「ミディアムハード」くらいの板が好まれます。
硬めの板は、強く踏み込んだ時にしっかりと反発力を生み出し、より高くジャンプしたり、キレのあるスピンをしたりする助けになります。
形状は同じく「ツインチップ」が基本ですが、ソール形状は反発力を得やすいとされる伝統的な「キャンバー形状」を選ぶ人も多いです。こちらも長さはやや短めが回転には有利ですが、着地の安定性なども考慮して選ぶと良いでしょう。
ラントリなど他のスタイルもチェック
グラトリの世界は、「乗り系」と「弾き系」という大きな二つのスタイルだけではありません。近年では、さらに多様なスタイルが登場し、注目を集めています。
その一つが「ラントリ」です。「ランニングトリック」の略で、その名の通り、ある程度のスピードを出して滑りながら(ラン)、その流れの中でトリックを繰り出すスタイルです。
スピードに乗った状態でのカービングターンとグラトリを組み合わせるなど、ダイナミックでスピード感のある動きが特徴です。ゲレンデ全体を使い、フリーランの延長線上としてグラトリを楽しみたい人に向いています。
また、よりアクロバティックで立体的な動きを取り入れた「3Dトリック」というスタイルもあります。これは、ボードを縦に回転させたり、体全体を使ってより複雑な動きをしたりするもので、高度な技術とバランス感覚が求められますが、非常に見応えがあります。
さらに、「ワンフット」と呼ばれる、片足をバインディングから外した状態で行うグラトリもあります。不安定な状態でボードをコントロールするため難易度は高いですが、独特のスタイルと自由な発想のトリックが魅力です。
このように、グラトリには様々な楽しみ方があります。基本をマスターしたら、色々なスタイルに目を向けてみるのも面白いでしょう。
まとめ:グラトリ乗り系・弾き系トリックについて
今回は、ゲレンデで気軽に楽しめるグラトリの二大スタイル、「弾き系」と「乗り系」について、その特徴や代表的な技、練習のポイントをご紹介しました。
板の反発力を活かしたダイナミックなジャンプやスピンが魅力の「弾き系」と、板をしならせた滑らかな動きがスタイリッシュな「乗り系」。どちらも奥が深く、スノーボードの楽しみを大きく広げてくれるテクニックです。
上達のためには、オーリーやプレスといった基本技から焦らず、安全に練習を始めることが何より大切です。また、自分の目指すスタイルに合わせて、板の硬さや形状といったギア選びをすることも上達への近道となります。
この記事を参考に、ぜひあなたに合ったグラトリスタイルを見つけて、ゲレンデでの新たな挑戦を楽しんでください。