【LIBTECH】T.RICE PROの評価は山全体を遊び尽くす最強の一本

LIBTECH「T.RICE PRO」が本当に自分のライディングスタイルに合っているのか、購入して失敗や後悔をしないか、真剣に検討していませんか?
試乗した人のレビューや口コミを参考にするものの、情報が多すぎて結局どんな板なのか掴みきれていないのかもしれません。
特に、評判は良いけれど、自分にとってオーバースペックではないか、あるいは不得意なジャンルはないのかといった不安を感じることもあるはずです。
この記事では、T.RICE PROの基本的な性能から、得意なジャンル、さらにはどんな人におすすめで、どのような滑りには向いていないのかまで、あらゆる角度から徹底的に評価し、解説していきます。
- T.RICE PROに搭載されたテクノロジーと具体的な性能
- フリーランからパークまで、各ジャンルにおける適性
- 購入後に後悔しないためのメリット・デメリット
- このボードが本当に自分に合っているかの最終判断
LIBTECH・T.RICE PROのスペックから性能を評価
ここでは、LIBTECH「T.RICE PRO」がどのようなボードなのか、その核心となるスペックとテクノロジーを一つひとつ掘り下げて評価します。トラビス・ライスのシグネチャーモデルとして、どのようなこだわりが詰め込まれているのかを見ていきましょう。
スペック項目 | 詳細 |
---|---|
シェイプ | ツイン |
形状(プロファイル) | C2(ダブルキャンバー) |
フレックス | 7 (10段階中) |
構造 | HP (Horsepower Construction) |
サイドカーブ | マグネトラクション |
コア | アスペン / 桐 |
ベース | シンタード |
推奨ジャンル | オールマウンテン、フリースタイル |
安定性と浮力を両立するC2形状
LIBTECH「T.RICE PRO」に採用されているC2形状は、パウダーでの浮力と圧雪バーンでのエッジグリップという、相反する要素を高い次元で両立させているのが最大の特徴です。
なぜなら、C2形状はボードの中央部分がロッカー形状で、両足の下がそれぞれキャンバー形状になっているハイブリッド構造だからです。この中央のロッカーがパウダーでノーズを浮かせやすくし、足下のキャンバーがターン時にしっかりと雪面を捉える役割を果たします。
例えば、朝一のパウダーを滑った後に、午後は圧雪されたゲレンデでカービングを楽しむ、といった一日の中でもコンディションが変わるような場面で、このC2形状の恩恵を強く感じられるはずです。
実際に乗ってみると、パウダーでは意識しなくてもスッと板が浮き上がる感覚があり、圧雪バーンに移動してもエッジが抜けるような不安感はほとんどありませんでした。
ただ、注意点として、フルキャンバーの板に乗り慣れている方は、センターのロッカー部分に少しルーズさを感じるかもしれません。慣れるまではターンの始動で少し戸惑う可能性がありますが、すぐにその操作性の高さに気づくでしょう。
圧雪でも有効なマグネトラクション
マグネトラクションは、まるで波打つステーキナイフのような形状のサイドカーブで、特に硬い雪面で絶大な効果を発揮します。この機能のおかげで、LIBTECH「T.RICE PRO」はアイスバーンでも安心してエッジを立て込むことができるのです。
通常のサイドカーブではエッジが滑ってしまうような硬いバーンでも、7つの異なる大きさのコブが雪面にしっかりと食い込み、強力なグリップ力を生み出します。言ってしまえば、ボードに滑り止めのスパイクが付いているような感覚に近いかもしれません。
私がこれを最も実感したのは、春先のシャバ雪が夜間に冷えて固まった、カリカリのアイスバーンを滑った時です。
他のボーダーが苦戦している中、T.RICE PROは不安なくエッジを食い込ませてターンができました。この安心感は、ライディングのレベルを一段階引き上げてくれると考えられます。
一方で、デメリットを挙げるとすれば、エッジの調整が少し特殊である点です。通常の板と同じ感覚でファイルで研磨すると、マグネトラクションの特性を損なう可能性があるため、メンテナンスには少し注意が必要です。
軽量で高反発な乗り心地のHP構造
HP(ホースパワー)構造は、LIBTECHのボードの中でも特に軽量かつ高反発な素材を組み合わせたものです。これにより、ボードは軽快な操作性とパワフルなオーリー性能を兼ね備えています。
この構造の核となるのは、アスペンと桐を組み合わせたウッドコアです。軽量な桐を効果的に配置することで、スイングウェイト(板を回す際の重さ)を軽減、スピン系のトリックを容易にします。
さらに、バサルトファイバー(玄武岩の繊維)をラミネートに加えることで、カーボンのような高い反発力を持ちながら、よりしなやかな乗り心地を実現しているのです。
こうして、ボードの軽さはリフト乗り場で手に持った瞬間にも感じられますし、滑走中は足元の軽快さとして体感できます。オーリーをかけた際には、少ない力で高く飛べるような、心地よい反発が返ってくるのが印象的でした。
ただし、非常に軽量であるため、超高速域での荒れたバーンでは、少しバタつきを感じる場面もあるかもしれません。とはいえ、一般的なフリーランの速度域では全く問題なく、むしろその軽快さが大きなメリットとなるでしょう。
高速域で安定感ある硬めのフレックス
LIBTECH「T.RICE PRO」のフレックスは、10段階中で7程度に設定されており、硬めのオールマウンテンボードに分類されます。このしっかりとしたフレックスが、高速域での安定性とターン後半の力強い抜けを生み出します。
柔らかい板では高速で滑走すると板がバタついてしまい、コントロールが難しくなることがあります。しかし、T.RICE PROの硬めのフレックスは、スピードを出してもボードがブレにくく、ライダーに安心感を与えてくれるのです。
例えば、広大なゲレンデで思い切りスピードを出してロングターンをするようなシチュエーションでは、この板の真価が発揮されます。
ターン中にエッジにしっかりと圧をかけてもボードが負けることなく、ターン後半にはその反発力を使って次のターンへと気持ちよく繋いでいくことが可能です。
もちろん、硬さがある分、低速での細かい操作やプレストリックにはある程度の脚力が必要となります。初心者が最初の1本として選ぶと、少し硬すぎると感じる可能性は否定できません。中級者以上で、滑りに力強さを求めているライダーにとって最適なフレックス設定と言えます。
スイッチもこなせるツインシェイプ
このボードは、ノーズとテールの形状・長さが全く同じツインシェイプを採用しています。これにより、レギュラースタンスでもスイッチスタンス(逆向きのスタンス)でも、全く同じ感覚で滑走することが可能です。
フリースタイルな滑りを好むライダーにとって、スイッチ性能は非常に大切な要素です。スイッチからのアプローチや着地、グラトリなど、滑りのバリエーションを広げる上で、ツインシェイプは不可欠な仕様となります。
実際に、ゲレンデでスイッチ走行を試してみると、レギュラー時とほとんど違和感なくターンができることに驚きます。特にキッカーでのスピンや、グラトリで180(半回転)をした後の滑走が非常にスムーズです。
これを理解した上で、このボードの汎用性の高さがうかがえます。フリーランやカービングだけでなく、パークやグラトリといったフリースタイル要素も存分に楽しみたいライダーの期待に応える設計になっています。
デメリットはほとんどありませんが、強いて言えば、パウダー専用のディレクショナルボードと比較すると、セットバック(ビンディングを後ろに下げること)を入れないと浮力が若干劣る場面があるくらいでしょう。
高い汎用性を持つオールマウンテン性能
これまでの要素を総合すると、LIBTECH「T.RICE PRO」は非常に高い汎用性を持つオールマウンテンボードであると評価できます。ゲレンデのあらゆるコンディション、そして幅広い滑走スタイルに対応できる懐の深さが最大の魅力です。
前述の通り、C2形状とマグネトラクション、そしてツインシェイプという組み合わせが、パウダー、圧雪バーン、アイスバーン、パークといった多様なフィールドで高いパフォーマンスを発揮する基盤となっています。
私の場合、一本の板でシーズンを通して楽しみたいと考えているため、このようなオールマウンテン性能は非常に重宝します。朝はパウダー、昼はカービング、午後はパークで軽く流す、といった自由な滑りを一本で完結させられるのです。
もちろん、「器用貧乏」というわけではなく、各ジャンルで専門ボードに迫るほどの高い性能を持っているのが、このボードがトッププロに支持される理由でしょう。
もし、あなたが特定のジャンルに特化するのではなく、山全体を遊び尽くしたいと考えているなら、これ以上ない選択肢の一つになるはずです。
LIBTECH・T.RICE PROのジャンル別滑走を評価
ここでは、スペックやテクノロジーが実際の滑走にどう影響するのか、代表的なジャンル別にT.RICE PROの性能を具体的に評価していきます。フリーランからパークまで、あなたの好みの滑りで、このボードがどう活躍するのかを想像してみてください。
ジャンル | 評価(5点満点) | コメント |
---|---|---|
カービング | マグネトラクションによるグリップが強力 | |
フリーラン | あらゆる雪質に対応できる最高のパートナー | |
パウダー | C2形状による浮力で楽に滑れる | |
グラトリ(弾き系) | 高い反発力でオーリーやノーリーがやりやすい | |
グラトリ(乗り系) | フレックスが硬めなため、プレスには技術と脚力が必要 | |
ラントリ | 高速域での安定感と反発が武器になる | |
キッカー(小~中) | 安定したアプローチと反発の得やすさが魅力 | |
キッカー(中~大) | プロ仕様の安定感と抜けの良さでビッグエアに対応 | |
ジブ | 硬めのフレックスとマグネトラクションがやや扱いづらい |
フリーランで発揮される高い走破性
フリーランにおいて、LIBTECH「T.RICE PRO」は最高のパートナーとなり得ます。その理由は、刻一刻と変わるゲレンデのコンディションに完璧に対応できる、卓越した走破性にあります。
朝一番の圧雪バーンから、人が滑って荒れてきた午後、そして日陰のアイスバーンまで、どのような雪質でも安定した滑りを提供してくれます。これは主に、強力なグリップを生むマグネトラクションと、様々な雪面でバランスの取れた乗り心地を実現するC2形状の組み合わせによるものです。
例えば、地形の壁を使ってスプレーを上げたり、沢地形で連続ターンを刻んだり、あるいはただただゲレンデをクルージングしたりと、山全体を遊び場として捉える滑り方で、この板の楽しさを最大限に味わうことができます。スピードを出しても安定しているため、安心して攻めた滑りが可能です。
このため、特定のジャンルにこだわらず、ゲレンデを自由に滑り回る「フリーラン」がメインスタイルのライダーにとっては、これ以上ない満足感を得られる一枚と言えるでしょう。
キッカーで抜群の安定性を誇る性能
キッカー(ジャンプ台)での性能は、トラビス・ライスのライディングを見ても分かる通り、ワールドクラスです。特に、中サイズから大サイズのキッカーにおいて、その真価を発揮します。
アプローチ(ジャンプ台への助走)での安定感が抜群に高いため、ライダーは恐怖心なくジャンプに集中できます。硬めのフレックスと足元のキャンバーが、ラインのズレを防ぎ、狙い通りの軌道でキッカーに進入することを可能にします。
そして、リップ(踏み切り部分)を抜ける際には、HP構造による力強い反発が、高さのある理想的なエアを生み出します。
もちろん、着地の安定性も非常に高いです。多少バランスを崩して着地しても、ボードがしっかりと衝撃を吸収し、暴れるのを抑えてくれます。この安心感が、新しいトリックに挑戦する勇気を与えてくれるのです。
一方で、小さなキッカーで軽く遊ぶ程度であれば、少しオーバースペックに感じるかもしれません。しかし、これからジャンプのスキルを向上させたい、より大きなキッカーに挑戦したいと考えている中級者以上のライダーには、最高の武器となります。
カービングのキレとグリップの強さ
LIBTECH「T.RICE PRO」は、カービング性能も非常に高いレベルにあります。その秘密は、やはりサイドカーブに採用されたマグネトラクションです。
この波型のサイドカーブが、硬い雪面にしっかりと食い込み、ターン中にエッジが抜ける不安を劇的に軽減します。これにより、ライダーは思い切ってボードを深く倒し込み、キレのあるシャープなカービングターンを描くことが可能になります。
特に、ターン後半でエッジに強くプレッシャーをかけたときのグリップ感と、そこから得られる反発を利用して次のターンへと切り返していく感覚は、一度味わうと病みつきになります。
C2形状の中央ロッカーにより、ターンの導入はスムーズで、足元のキャンバーがターン中の安定感をしっかりとサポートします。
ただし、ハンマーヘッド形状のようなカービング専用ボードと比較すると、ターンの絶対的なキレ味では一歩譲ります。
あくまでオールマウンテンボードの枠組みの中での高いカービング性能と理解するのが適切です。フリーランの途中で気持ちの良いカービングを織り交ぜたい、という使い方に最適です。
パウダーライディングでの浮力と操作性
ツインシェイプでありながら、パウダーでの高い性能を誇るのもT.RICE PROの大きな特徴です。C2形状の中央ロッカー部分が、パウダースノーの中でノーズを自然に浮き上がらせる役割を果たします。
これにより、パウダーライディングでありがちな後足への過度な負担が軽減され、よりリラックスして長時間楽しむことができます。深い新雪の中でも失速しにくく、ツリーラン(木々の間を滑る)のような細かい操作が要求される場面でも、軽快な取り回しが可能です。
私がパウダーで試した際には、ビンディングの位置を通常の中央設定のままでも、十分に浮力を感じることができました。
もちろん、より深い雪に対応するためにビンディングを少し後ろに下げる(セットバックする)ことで、さらに楽に、そしてダイナミックなパウダーライディングが可能になります。
パウダー専用のボードほどの絶対的な浮力はありませんが、ゲレンデ脇に残ったパウダーを狙ったり、降雪があった日に一日中楽しんだりするには、十分すぎる性能を持っていると言えるでしょう。
グラトリの適性と操作性について
グラトリの適性については、少し評価が分かれるポイントかもしれません。弾き系のトリックと乗り系のトリックで、得意不得意がはっきりと現れます。
まず、オーリーやノーリーといった弾き系のトリックにおいては、HP構造による高い反発力が大きな武器となります。軽く踏み込むだけでボードがしっかりと反発し、高さのあるトリックを繰り出しやすいです。高速で滑りながらトリックを仕掛ける「ラントリ」との相性も抜群です。
一方で、プレスやバターといった乗り系のトリックでは、ボードの硬さが少しネックになることがあります。ボードをしならせるためには、相応の脚力と技術が求められるため、初心者や脚力に自信のないライダーには難しく感じる可能性があります。
このように言うと、グラトリには向いていないように聞こえるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
パワーとキレを活かしたダイナミックなグラトリを好む中級者以上のライダーであれば、このボードの反発力を味方につけて、独自のスタイルを表現できるはずです。
ジブやパークでの使いやすさはどうか
ジブやパークアイテム(レールやボックスなど)での使いやすさについては、T.RICE PROが最も得意とする領域ではない、というのが正直な評価です。
その主な理由は2つあります。一つは、前述の通りフレックスが硬めであること。レールやボックスの上でボードをプレスしたり、しならせたりする動きが難しくなります。
もう一つは、マグネトラクションです。この強力なエッジグリップが、アイテムに対してシビアに反応しやすく、意図しないエッジの引っかかり(逆エッジ)を誘発する可能性があります。
もちろん、トラビス・ライス自身がナチュラルアイテムで素晴らしい滑りを見せているように、高いスキルがあれば問題なくこなせます。
しかし、これからジブを始めたい、あるいはパークのアイテムを中心に楽しみたいと考えているライダーには、よりフレックスが柔らかく、エッジの引っかかりが少ないボードの方が適していると考えられます。
このボードの主戦場はあくまでも山全体であり、パークは時々流す程度、という付き合い方が最もその性能を引き出せるでしょう。
総括:LIBTECH・T.RICE PROの総合評価
この記事で解説してきたLIBTECH「T.RICE PRO」の評価と特徴を、最後に箇条書きでまとめます。購入を検討する際の最終チェックとしてご活用ください。
- C2形状がパウダーでの浮力と圧雪での操作性を両立
- マグネトラクションによりアイスバーンでも強力なエッジグリップを発揮
- HP構造は軽量で高い反発力を生み出す
- フレックスは硬めで高速滑走時の安定性が非常に高い
- ツインシェイプなのでスイッチ性能も完璧
- ゲレンデのあらゆる状況に対応できる最高のオールマウンテンボード
- フリーランで山全体を滑り倒すスタイルに最適
- 中級者から上級者向けのモデル
- キッカーでの安定感と反発力はプロレベル
- カービングではキレとグリップの強さを体感できる
- ツインながらパウダーでも十分な浮力を確保
- グラトリは反発を活かす弾き系トリックが得意
- 乗り系のグラトリやプレスには脚力が必要
- ジブやレールをメインにするには少し不向き
- 一本でシーズンを遊び尽くしたいライダーにとって最高の選択肢








