グラトリのローテーション(1ローテ・2ローテ)を徹底解説!基本から上達のコツまで

グラトリ初心者の多くが憧れる回転系トリックですが、いざ挑戦すると思うように回れず悩んでいませんか。
スノーボード上達の過程で壁と感じやすいグラトリのローテーションには、実は成功に繋がる明確なコツが存在します。ただやみくもに練習するだけでは、なかなか上達を実感できないかもしれません。
この記事では、グラトリのローテーションに必要な基本動作から、よりきれいに、そして高く回るための応用テクニックまで、段階的に分かりやすく解説していきます。
- ローテーションの基本となる先行動作の仕組み
- 1ローテから多回転へステップアップするための練習法
- 逆エッジの恐怖心を克服し安全に練習するコツ
- オフシーズン中にできる効果的なトレーニング方法
グラトリのローテーションの基本と先行動作

このセクションでは、グラトリのローテーションを成功させるために不可欠な、体の使い方や意識すべき基本動作について詳しく解説します。
ローテーションの基本とは?
グラトリにおけるローテーションとは、スノーボードの板を雪面に対して水平に回転させる動作全般を指します。
いわゆる「スピン」や「回転」と呼ばれる動きであり、多くのグラトリトリックの基礎となる、非常に大切な技術です。これが出来れば、表現の幅が一気に広がります。
なぜなら、単純な180度(ワンエイティ)の回転から、360度(スリーシックスティ)、540度(ファイブフォーティ)といった多回転技まで、全てのトリックがこのローテーションの技術を応用したものだからです。
言ってしまえば、ローテーションをマスターしなければ、グラトリの上達は望めないと考えられます。
例えば、ジャンプしながら半回転する「オーリー180」や、ノーズを軸にして体を入れ替える「ノーリーフロントサイド180」など、初心者でも挑戦しやすいトリックのほとんどにローテーションの要素が含まれています。
そのため、まずはこの基本をしっかりと体に覚えさせることが、上達への一番の近道となります。
先行動作が成功の鍵を握る
グラトリのローテーションにおいて、回転力を生み出すために最も大切になるのが「先行動作」です。
先行動作とは、回転したい方向とは逆の方向に一度体をひねり、その反動を利用して回転のきっかけを作る一連の動きを指します。この動きがなければ、スムーズな回転は望めません。
具体的には、上半身、特に肩と腕を意識的に使うことが鍵となります。回転したい方向とは反対側に肩を入れ、腕を振ることで、上半身に強い「ひねり」が生まれます。
そして、そのひねりを解放する力を使って下半身、つまりスノーボードを回していくのです。多くの初心者は、板だけを無理に回そうとして失敗しますが、本来は上半身の動きが先行し、下半身がそれに追従するイメージが正しい動きです。
このため、練習の初期段階では、ジャンプや板のことは一旦忘れ、立った状態で上半身をひねって回転する感覚を掴むことから始めると良いでしょう。
腕を大きく広げ、肩をしっかりと回す意識を持つだけで、回転力が格段に向上することを体感できるはずです。
回転方向を決める目線の使い方
先行動作と並んで、ローテーションの成功率を左右するのが「目線」の使い方です。人間の体は、目線が向いている方向に自然と進もうとする性質を持っています。
この性質を利用し、回転したい方向へ正確に目線を送ることが、安定したローテーションには不可欠です。
回転中は、不安からつい足元や正面を見てしまいがちですが、それでは体の回転が途中で止まってしまいます。
例えば、180度回転したいのであれば、体の回転に合わせて真後ろの景色を見るように意識します。360度であれば、一度後ろを通過し、再び進行方向の景色を捉えるまで目線を送り続ける必要があります。
このように言うと難しく聞こえるかもしれませんが、最初は目標物を設定すると分かりやすいでしょう。
例えば、進行方向に対して90度横にある木やリフトの支柱などを目標にし、回転しながらその目標物を捉える練習を繰り返します。
こうすることで、自然と正しい目線の送り方が身につき、回転軸も安定しやすくなります。目線は、回転の舵取り役であると考えると、その重要性が理解できるはずです。
上半身と下半身を連動させる
これまで解説した先行動作と目線の使い方を、実際のスノーボードの動きに繋げるためには、上半身と下半身をスムーズに連動させることが求められます。上半身で作った回転力を、いかに効率よく下半身とボードに伝えるかが、回転のキレや安定性を決定づけます。
この連動性を高めるポイントは、体の軸を真っ直ぐに保つ意識です。回転しようとするあまり、体が「く」の字に折れてしまうと、せっかく上半身で作った力が途中で逃げてしまい、ボードまで伝わりません。
頭のてっぺんからボードの中心まで一本の串が通っているようなイメージを持ち、その軸を中心に体全体がコマのように回る感覚を養うことが大切です。
また、膝と足首を柔らかく使うことも、連動性を高める上で役立ちます。膝が伸びきっていると、上半身のひねりを下半身で吸収できず、ぎこちない動きになってしまいます。
常に少し膝を曲げた基本姿勢を保ち、上半身の動きに合わせて下半身が自然についてくるような、リラックスした状態を心がけてください。この連動がスムーズにできるようになれば、少ない力で楽に回れるようになります。
まずは基本的な1ローテから
グラトリのローテーションを練習する際は、いきなり高回転を目指すのではなく、まずは基本的な180度回転、通称「1ローテ(ワンローテ)」を確実にマスターすることから始めましょう。全ての回転トリックは、この180度の動きがベースとなっているため、ここを疎かにすると後々つまずく原因となります。
フロントサイド180とバックサイド180
180度の回転には、体の正面側(お腹側)に回る「フロントサイド」と、体の背面側(背中側)に回る「バックサイド」の2種類があります。
一般的には、進行方向が見やすいフロントサイドの方が恐怖心が少なく、初心者にとっては挑戦しやすいと考えられます。まずはフロントサイド180から練習し、慣れてきたらバックサイド180にも挑戦してみると良いでしょう。
練習のステップ
練習する際は、止まった状態から始め、徐々にスピードを上げていくのが安全です。
- その場での回転: まずはビンディングを装着し、平らな場所で止まったまま上半身の先行動作を使って180度回転する練習をします。
- ごく低速での回転: 次に、ほとんどスピードがない状態で直滑降し、軽く膝を使いながら180度回ってみます。
- スピードを乗せて: 慣れてきたら、少しスピードを出し、オーリーやノーリーといったジャンプ動作を加えて回転します。
このステップを踏むことで、無理なく安全に1ローテの感覚を掴むことができます。
2ローテを目指すための注意点
基本的な1ローテが安定してきたら、次はより高難易度のトリックに挑戦したくなるでしょう。ここで言う高難易度トリックには、通称「2ローテ(ツーローテ)」と呼ばれるトリックなどが含まれます。
「2ローテ」とは、回転中に一瞬動きが止まったように見える(ロックした状態)を含むトリックを言います。これらのトリックを成功させるためには、1ローテの動作をより強く、より高く、そしてより速く行う必要がありますが、いくつか注意すべき点も存在します。
また、回転数を増やすには、空中での滞空時間も必要になります。そのためには、より高いオーリーやノーリーが不可欠です。板の反発をしっかりと利用して高さを出す練習も並行して行う必要があります。
注意点として、高回転を目指す際は、逆エッジによる転倒のリスクも高まります。最初は緩やかな斜面で、スピードを抑えて練習を開始し、ヘルメットやプロテクターを着用するなど、安全対策を万全にすることをおすすめします。
グラトリのローテーションを上達させるコツ

基本を理解した上で、さらにローテーションの質を高め、トリックの成功率を上げるための具体的なコツや練習方法を紹介します。
板の反発を最大限に活かす方法
より高く、よりキレのあるローテーションを行うためには、スノーボードの板が持つ「反発」を最大限に引き出す技術が求められます。板の反発をうまく利用できると、少ない力で高さを出すことができ、空中での余裕が生まれるため、回転動作もスムーズになります。
板の反発を活かすための基本は、オーリーやノーリーといったジャンプ動作の質を高めることです。
しっかりと板をしならせる
反発力を得るには、まずジャンプの踏み切り時に、自分の体重を使って板を雪面に強く押し付け、大きく「しならせる」必要があります。
この「しなり」が元に戻ろうとする力が、反発の源となります。テール側で踏み切るオーリーであればテールを、ノーズ側で踏み切るノーリーであればノーズを、雪面にグッと押し込む感覚です。
しなりが戻るタイミングに合わせる
次に、板が元に戻ろうとするタイミングに合わせて、体を上に引き上げる動作を同調させます。このタイミングが完璧に合うと、まるでトランポリンのように体が宙に浮き上がります。
タイミングが早すぎても遅すぎても、板の反発を十分に活かすことはできません。繰り返し練習する中で、板が自分を押し返してくれるスイートスポットを見つけることが大切です。この感覚が掴めれば、ローテーションの高さが見違えるように変わるでしょう。
低速でもきれいに回る練習
グラトリのローテーションは、スピードがないと回れないと思われがちですが、実際には低速でもきれいに回る練習が上達のためには非常に効果的です。
高速でのトリックは勢いでごまかせる部分もありますが、低速では正確な軸とバランス、そして丁寧な板の操作が求められるため、基礎技術の向上に直結します。
低速で練習する最大のメリットは、一つ一つの動作を確認しながら、ゆっくりとフォームを固められる点にあります。先行動作は十分か、目線は正しい位置に送れているか、体の軸はぶれていないかなど、自分の動きを客観的に分析する余裕が生まれます。
また、低速での練習は恐怖心が少ないため、新しいトリックに挑戦する際の心理的なハードルを下げてくれます。特に、逆エッジへの恐怖が強い初心者にとっては、安全なスピードで回転の感覚を養うことが、自信に繋がります。
ゲレンデの下部にあるような、人の少ない緩やかな斜面を見つけて、まずは平地で板を滑らせる程度のスピードから、ゆっくりと回転する練習を繰り返してみてください。この地道な練習が、結果的に高速域でのトリックの安定性を高めることになります。
恐怖心をなくし逆エッジを防ぐ
グラトリに挑戦する多くの人が直面する壁が、転倒、特に「逆エッジ」に対する恐怖心です。逆エッジとは、進行方向に対して滑走面の山側のエッジが雪面に引っかかり、急激にブレーキがかかって激しく転倒する現象を指します。
この経験がトラウマとなり、ローテーションへの挑戦をためらわせてしまうことは少なくありません。
この恐怖心を克服し、逆エッジを防ぐためには、まずそのメカニズムを理解することが第一歩です。
逆エッジは、主に着地時に体のバランスが崩れ、進行方向とは逆のエッジに体重が乗ってしまうことで発生します。
したがって、回転中は常に体の軸を中心に保ち、着地時には進行方向側のエッジ(順エッジ)に意識的に体重を乗せるように心がけることが基本的な対策となります。
さらに、物理的な安全対策も恐怖心を和らげる上で非常に有効です。ヘルメットはもちろんのこと、お尻や膝を守るプロテクターを着用することで、転倒時の衝撃を大幅に軽減できます。
守られているという安心感が、思い切った動作を可能にし、結果として上達を早めることにも繋がります。安全な環境を整えた上で、まずは転んでも痛くない緩斜面やパウダースノーで練習を始めるのが良いでしょう。
地上でできる効果的なオフトレ
スノーボードは冬のスポーツですが、シーズンオフ期間中、つまり地上で行うトレーニング(オフトレ)も、グラトリのローテーションスキルを向上させる上で極めて重要です。
雪上での練習時間を最大限に活かすためにも、オフシーズン中に体の使い方やバランス感覚を養っておくことが、ライバルに差をつける鍵となります。
具体的には、以下のようなトレーニングが効果的です。これらのトレーニングは、それぞれスノーボードの特定の動きをシミュレートし、必要な筋力や感覚を鍛えるのに役立ちます。
トレーニング方法 | 主な効果 | 必要なもの |
---|---|---|
トランポリン | 空中でのバランス感覚、回転軸の意識向上 | トランポリン施設 |
スケートボード | 板に乗る感覚、体幹の強化 | スケートボード |
バランスボード | 体幹、下半身の安定性向上 | バランスボード |
ストレッチ | 柔軟性の向上、怪我の予防 | 特になし |
これらのオフトレを継続的に行うことで、シーズンインした際に、体がスムーズに動くことを実感できるはずです。特にトランポリンは、空中での姿勢制御や目線の使い方を安全に練習できるため、多回転を目指す人には強くおすすめします。
上達への近道になる動画の選び方
現代では、プロスノーボーダーの滑りを動画で手軽に見ることができます。これらの動画は、グラトリ上達のための非常に優れた教材となり得ますが、ただ漠然と眺めているだけでは効果は半減してしまいます。上達に繋げるためには、目的意識を持った動画の選び方と視聴方法が大切です。
まず、動画を選ぶ際には、自分と滑りのスタイルが似ている、あるいは目標とするスタイルのライダーを見つけることから始めましょう。また、レギュラースタンスかグーフィースタンスか、自分と同じスタンスのライダーの動画を選ぶと、動きを真似しやすくなります。
視聴する際は、トリックの全体像を掴んだ後、再生速度を落としてスローモーションで見ることをお勧めします。特に、先行動作の始動のタイミング、腕の振り方、目線の送り方、そして着地時の体の使い方など、一連の動きをコマ送りで細かく分析します。
自分ができていない部分や、真似すべきポイントが明確になるはずです。自分の滑りを撮影した動画と比較分析すれば、課題はさらに浮き彫りになるでしょう。
このように、動画を単なるエンターテイメントとしてではなく、分析ツールとして活用することが上達への近道となります。
まとめ:グラトリ ローテーション上達のポイント
これまで解説してきたグラトリのローテーションを成功させ、上達するための重要なポイントを以下にまとめます。これらの項目を常に意識して練習に取り組むことで、あなたのグラトリスキルは飛躍的に向上するはずです。
- ローテーションは多くのグラトリトリックの基礎
- 先行動作は回転したい方向と逆に体をひねることから始まる
- 肩と腕を大きく使い上半身のひねりを生み出す
- 回転のきっかけは上半身が作り下半身が追従する
- 目線は常に回転したい方向へ送り続ける
- 体の軸を真っ直ぐに保ちコマのように回る意識を持つ
- 膝と足首を柔らかく使い動きを連動させる
- まずはフロントサイド180のマスターを最優先する
- 高回転を目指す際はより強く高いジャンプが必要
- 板をしっかりしならせてその反発力を最大限に利用する
- 低速での練習は正確なフォーム固めに効果的
- 逆エッジの仕組みを理解し恐怖心を克服する
- プロテクターの着用は安全と上達のために有効
- オフトレで体幹とバランス感覚を養う
- 動画はスロー再生で動きを細かく分析する